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マシュー・カスバートは、寡黙で、結婚もせず、世間を避けるように
生きてきた老人で、何よりも女性が苦手です。
マシューは妹のマリラと、お隣のリンド夫人以外とは会話できないくらいの
内気さでした。
孤児院から引き取る予定の男の子を駅まで迎えに行って、
そこにいたのが“女の子”のアンだったことに途方に暮れるのですが、
その場を自分でやりすごさなければならない試練を
「ライオンのすみかにもぐりこんでひげを引き抜いてくるより、
はるかに困難な仕事」と表現されています。
それだけ女の子、それも見ず知らずの孤児院から来た女の子に声を
かけるのは勇気が必要だったのだと思います。
ところが、その心配をよそにアンから話しかけてきたのです。
「グリーン・ゲイブルズのマシュー・カスバートさんでしょ?」と。
それからアンは目を輝かせながら、おしゃべりをやめません。
ところが、あんなに女の子が苦手なのに、マシューは自分で驚くほど
アンのおしゃべりを楽しんでいたのです。
小さな女の子と一緒にいて楽しいとは考えたこともなかったマシューに、
このときすでにアンの魔法がかかっていたのだと思います。
そして、グリーン・ゲイブルズに戻って、手違いだと気付いた妹のマリラが
孤児院へ返すつもりであるのを遠慮がちに反対することになります。
マシューは何か思い込んだら最後、口には出さないけれど、
あきれるほど頑固にそれにしがみつき、頑固に黙り込むのでした。
マリラはそのマシュー流のやり方を知っていたので、
このとき半ば諦めていたのかもしれませんね。
そして、アンがグリーン・ゲイブルズの家族となり、マシューは相変わらず
寡黙でしたが、いつもアンのおしゃべりに嬉しそうに
耳をかたむけるのでした。
マシューの優しさを感じた一番の出来事は、なんといっても
パフスリーブのドレスをアンにプレゼントした場面です。
マリラはアンに厳しい躾をすると同時に、自分同様飾り気のない
実用的な洋服を着させていました。
アンは他の女の子のようにパフスリーブのドレスを着たいのですが、
マリラはそれを許さなかったのです。
クリスマス・イブの朝にそのドレスを見たアンの喜びようといったら…。
「たった今、こんなに素晴らしいことがあったのに、朝ごはんなんて、
ありふれすぎているわ。朝ごはん代わりに、
目にドレスを眺めさせて、胸いっぱいになっているほうがいいわ。」
アンが16歳になったとき、年老いて働きすぎのマシューに言います。
「わたしが、もともと もらうつもりだった男の子だったらよかったのにね。
そうすれば、いくらでも手伝ってあげられたから、もっとずっと
楽をしてもらえたのに。そう思っただけでも、
男の子だったらって思わずにはいられないの。」
「その、なんだ、男の子が1ダースいるより、
おまえひとりのほうがいいよ、アン。
よく覚えておおき、男の子が1ダースかかっても、
おまえにはかなわないんだよ。
その、なんだ、エイブリ−奨学金をもらったのは、
確か男の子じゃなかっただろう?女の子だったよ、うちの子だ。
わしの自慢の、うちの子だよ」
この場面はおそらく「赤毛のアン」を読んだ誰しもが感動をもらった
シーンのひとつだと思います。
私にとってももちろん、大好きな場面です。
(翌日に心臓発作で亡くなるからよけいでしょうか…)
アンはのちに自分の息子にマシューと名づけます。
マシューはアンの次に印象深い、大好きな登場人物です。

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